研究紹介
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Z型配位子による金属触媒反応の活性化
遷移金属触媒の配位子は、3種類に分類されます。
L型:配位子から金属に2電子を供給する
X型:配位子と中心金属から1電子ずつ出し合い結合を形成する
Z型:配位子が中心金属から2電子受け取る
ほとんどの配位子はL型、X型に分類され、Z型配位子の例は少なく、さらにZ型配位子をもつ錯体を利用した触媒反応はほとんど報告されていません。そのため、私たちは、Z型配位子がもたらす新たな反応性について研究しています。
現在のところ、ホウ素原子をZ型配位子としてもつ金触媒を用いて反応を行うと、金の反応活性が向上することを見出しています。これは、隣接ホウ素原子が金の電子密度を低下させた結果、そのLewis酸性が向上したためと考えています。
代表的な原著論文
Air-Stable Cationic Gold(I) Catalyst Featuring a Z-Type Ligand: Promoting Enyne Cyclizations
Inagaki, F.; Matsumoto, C.; Okada, Y.; Maruyama, N.; Mukai, C.
Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 818-822.
DOI: 10.1002/anie.201408037
CO2の利用 空気中
ヒトは呼吸により二酸化炭素を放出していますが、体内での二酸化炭素の挙動についてはよくわかっていません。また、二酸化炭素は化石燃料などの燃焼により生じるガスであり、地球温暖化の原因物質の1つとしてその削減への取組が行われていますが、残念ながらCO2が原因であると完全に特定されたわけではありません。
一方、CO2吸収剤としてアミン類等が、CO2をC1ユニットとして用いるための種々の反応(Kolbe-Schmidt反応やGrignard反応、触媒的固定化反応等)開発が精力的に研究されており、CO2の化学反応をより深く理解することは、上記2課題の解明や解決につながることが期待されます。以上の理由から、我々は空気中のCO2を室温で利用する研究を行っています。
現在利用されているアミン系CO2吸収剤は、CO2だけでなく水も吸収するという問題があり、吸収したCO2を利用するには水との分離が必要となります。我々は探索の末、疎水性官能基をアミン近傍に導入すると、アミンがCO2のみを吸収し、水を一切含まないことを発見しました。また、得られたMXDA·CO2を加熱してCO2を放出し、疎水性のGrignard反応に用いたところ、高収率で目的のカルボン酸が得られることも確認しました。
代表的な原著論文
CO2-Selective Absorbents in Air: Reverse Lipid Bilayer Structure Forming Neutral Carbamic Acid in Water without Hydration.
Inagaki, F.; Matsumoto, C.; Iwata, T.; Mukai, C.
J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 4639-4642.
DOI: 10.1021/jacs.7b01049